WMS(倉庫管理システム)を導入したものの、「せっかくデータが取れているのに、活用できていない…」「AI搭載WMSが気になるけれど、何ができるのか分からない」という声は少なくありません。
本記事では、「WMSで取得したデータで何ができるのか」を、基礎的な活用からAIを用いた発展的な取り組みまで、物流現場の目線で分かりやすく解説します。
これからWMS導入を検討している方はもちろん、「すでに導入済みだが、もっと活用したい」という方にも役立つ内容です。
近年、物流業界では深刻な人手不足や物流コストの上昇が続いています。
また、EC市場の拡大により、SKU数や出荷件数は増える一方で、リードタイムは短縮される傾向にあります。
こうした環境の中で、従来のように「ベテラン担当者の経験と感覚で、日々の現場を回す」という運営には限界が見え始めています。
WMSは、入荷・出荷・在庫・作業実績など、倉庫内のあらゆる情報を記録するシステムです。
つまり、倉庫の「今」と「過去」が蓄積されたデータベースと言い換えることもできます。
そのデータをうまく活用することで、例えば次のようなことが可能になります。
「WMSのデータを活かせるかどうか」=「現場改善のスピードと質を左右する要素」になりつつあるのが、現在の物流現場と言えるでしょう。
近年は、AIやマテハン設備・物流ロボットの導入を検討する企業も増えています。
しかし、これらのテクノロジーを最大限活かすには、前提としてWMSのデータが正しく整備されていることが欠かせません。
まずはWMSのデータを有効活用し、現場と数字がリンクした状態を作ることが、倉庫DXを進めるうえでの第一歩となります。
ここでは、一般的なWMSで取得できる代表的なデータと、それぞれの特徴・活用の方向性を整理します。
代表的な項目例は以下の通りです。
在庫データは、欠品防止・在庫圧縮・先入れ先出しの徹底など、庫内全体の品質とコストを左右する基礎情報になります。
代表的な項目例は以下の通りです。
これらのデータを活用することで、繁閑の傾向やボトルネック工程が明確になり、人員配置やシフトの最適化に役立ちます。
代表的な項目例は以下の通りです。
作業実績データは、人・設備の生産性や品質を見える化するための重要な情報です。標準時間の設定や作業改善、人材育成にも活用できます。
自動倉庫、ソーター、AGV/AMRなどのマテハン・ロボットとWMSを連携している場合、搬送履歴や稼働率などのデータが取得できるケースもあります。
設備の投資対効果を評価したり、保守計画・稼働計画の最適化に活用できます。
ここからは、WMSのデータ活用を「これから始める」現場に向けて、まず取り組みたい基本的なテーマを3つ紹介します。
最初のテーマは、在庫の見える化・在庫精度の向上です。
これらを見える化するだけでも、在庫の持ち方を見直すきっかけになります。
定期的な棚卸結果とWMS在庫との差異を分析することで、入出庫のどこでミスが起きやすいかも見えてきます。
次のテーマは、作業生産性の見える化です。
代表的な指標は以下の通りです。
こうした指標をもとに、「どの工程がボトルネックになっているか」「どの時間帯に負荷が集中しているか」を把握することで、改善の優先順位が分かるようになります。
3つ目のテーマは、出荷波動の把握と人員計画への反映です。特にEC倉庫やBtoC配送では、日別・曜日別・時間帯別の出荷波動が大きくなりがちです。
WMSの出荷データをもとに、以下を分析してみましょう。
これらを把握したうえで、人員シフトを出荷波動に合わせて調整することで、残業の削減・リードタイムの安定化などが期待できます。
基礎的な見える化・KPI管理に慣れてきたら、少し踏み込んだデータ利活用にもチャレンジできます。ここでは、現場で実践されることが多い応用例をいくつか紹介します。
WMSの出荷履歴データを分析することで、SKUごとの出荷頻度や組み合わせ(同時出荷される商品)を把握できます。これをもとに、
などのレイアウト最適化が可能になります。結果として、ピッキング生産性の向上や作業者の負荷軽減が期待できます。
ソーターや自動倉庫、AGV/AMRなどの設備を導入した際にも、WMSデータが役立ちます。
こうした指標を数字で追うことで、設備投資の効果を定量的に評価できるようになり、今後の追加投資や他拠点への展開判断にも役立ちます。
3PL事業者など、複数荷主の物流を受託している場合には、荷主別・取引先別に採算を把握することが重要です。
例えば、WMSデータから以下のような指標を算出できます。
これらをもとに、荷主単位での収支・採算を把握できれば、契約条件の見直しや料金体系の再検討など、経営判断にもつながります。
WMSの誤出荷・返品データを蓄積しておくことで、クレームの要因分析が可能です。
分析結果をもとに、
といった再発防止策につなげることができます。
「感覚的な原因推測」から「データに基づく対策」へ移行することで、改善効果の再現性も高まります。
実際にWMSのデータ活用を進めようとすると、次のような課題に直面しがちです。
ここでは代表的な課題と、その対策を紹介します。
多くの現場で最初にぶつかるのが、「データはたくさんあるが、どれを見ればいいか分からない」という悩みです。
対策のポイント:
初めから完璧を目指さず、「小さく始めて徐々に広げる」ことが成功のポイントです。
データ活用の前提となるのが、バーコードスキャンやロケーション登録などの「入力ルールの徹底」です。ここが曖昧だと、いくら分析しても正しい結論が出せません。
WMS導入時・運用見直し時には、現場教育やルールの見直しもセットで進めることが重要です。
データ活用が続かない原因の一つが、「帳票出力やExcel加工に手間がかかりすぎる」ことです。
「毎月の資料作成が負担にならない仕組み」を作ることで、データ活用が現場に定着しやすくなります。
基礎編・発展編では、「人がデータを見て判断するデータ活用」を中心に紹介しました。
しかし近年は、AI搭載WMSやWMS×AI連携により、データ活用のレベルそのものが大きく進化しています。
つまり、“気づき(発見)”も“判断”もすべて人間側に依存していました。
つまり、WMSが「記録するシステム」から「判断を支援するシステム」へ進化していきます。
過去の出荷履歴・曜日・天候・キャンペーン情報などをAIが学習し、明日・来週・繁忙期などの出荷量を予測します。
→ 過不足のない人員計画や設備稼働計画が可能に
需要予測と作業生産性データを掛け合わせ、「どの工程に何名配置するか」「早番・遅番をどう組むか」を自動提案します。
→ 管理者の計画作成工数を削減しつつ、精度も向上
AIがピッキング動線と出荷頻度を分析し、出荷頻度の高いSKUや同時出荷の多いSKUを前面に配置するなど、レイアウト案を自動生成します。
→ ムダな動線を削減し、生産性向上・誤出荷防止に寄与
カメラやハンディの画像認識とWMSを組み合わせることで、商品ラベル・バーコード・賞味期限などを自動で読み取り、検品工程を半自動化・自動化します。
→ 人依存の検品を減らし、品質とスピードを両立
「この商品の在庫は?」「今日の出荷見込みを教えて」などの自然な言葉で、WMSデータを呼び出せる仕組みも登場しています。
→ 管理者の状況把握が早くなり、現場への指示もスピーディに
AI搭載WMSは魅力的ですが、いきなり高度なAI活用に踏み出す必要はありません。まずは、AIが正しく学習するための「データの土台づくり」から始めましょう。
これらは、将来的にAI搭載WMSを選ぶ際にも、大きなアドバンテージになります。
「WMS×AI」の必要と、AIとの連携を活用した実際の導入事例をもとに、検品・在庫管理・要員配置の最適化がどのように実現されているのかを下記記事で解説しています。
WMS×AIで実現する倉庫DXの未来
業務効率化・省人化・標準化の可能性
データ活用を成功させるには、システムだけでなく、現場に根づく“改善サイクル”が欠かせません。
ここでは、無理なく始められる4つのステップを紹介します。
まずは「何を改善したいか」をはっきりさせます。
目的が曖昧なままデータを眺めても、改善にはつながりません。「1テーマ・1KPI」からスタートするのがおすすめです。
次に、自社のWMSで「どのデータがどれだけ取れているか」を棚卸します。
データの品質を整えることで、分析の精度が高まり、AI活用の下地にもなります。
日次・週次・月次で見るべき指標を整理し、レポートの型を作ります。
「見たらすぐ状況が分かる」レポートを作ると、改善活動が継続しやすくなります。
データ活用は、いきなり大掛かりに始める必要はありません。次のような小さな単位からトライしてみましょう。
小さく試して効果を確認しながら、他工程や他拠点に横展開していくのが成功のコツです。
データ活用を進めるうえで、どのWMSを選ぶかは非常に重要なポイントです。
データ活用の基礎は「見える化」です。見やすいレポートが標準で搭載されているWMSは、大きなメリットになります。
今後のDXを見据えるなら、「つながりやすさ」は必須条件です。
将来的なAI活用を視野に入れるなら、こうしたオプションや拡張性をチェックしておくことが重要です。
システムを導入するだけでは成果は出ません。「現場で使いこなせるようになるまで伴走してくれるか」は、WMS選定時の大きな判断材料になります。
最後に、本記事のポイントを整理します。
WMSのデータ活用は、一度にすべてをやろうとする必要はありません。「1つのテーマから小さく始め、改善サイクルを回し、徐々に範囲を広げる」ことが、現場に根づく倉庫DXの近道です。
自社のデータ活用・倉庫DXの一歩目として、ぜひWMS選びから見直してみてください。
WMS(倉庫管理システム)と一言で言っても、 会社の規模や業態によって求められる機能は大きく異なります。 このサイトでは、倉庫・工場の規模に応じたおすすめのWMSを紹介します。
フレームワークス
(iWMS® G5)
引用元:フレームワークス公式HP
https://www.frame-wx.com/wms
シーネット
(ci.Himalayas/R2)
引用元:シーネット公式HP
https://www.cross-docking.com/service/wms-standard/
mylogi
(mylogi)
引用元:mylogi公式HP
https://system.mylogi.jp/