倉庫や物流センターにWMS(倉庫管理システム)を導入すると、入荷・保管・出荷といった日々のオペレーションがシステムで一元管理できるようになります。
しかし、せっかくWMSを導入しても「作業指示と在庫管理にしか使っていない」「データはたくさん溜まっているが活かしきれていない」という声も少なくありません。
実は、WMSが記録しているデータをきちんと分析・活用することで、作業の平準化・省人化・誤出荷削減・在庫適正化 など、現場のさまざまな課題にアプローチできます。
さらに近年は、AI(人工知能)を搭載したWMSも登場し、データ活用の幅は広がり続けています。
本記事では、WMSで取得したデータを分析することで「何ができるのか」「どうやって進めればよいのか」を分かりやすく解説しながら、その延長線上にあるAI搭載WMSの可能性についても紹介します。
WMSのデータ分析というと「高度な統計分析」「専門的なツール」といったイメージを持たれることがありますが、本質的な目的はとてもシンプルです。それは、現場のムダやムラを“見える化”し、改善サイクルを回しやすくすることです。
例えば、次のような悩みは、多くの物流現場で共通しています。
こうした課題を、経験や勘だけで解決するのは限界があります。そこで役立つのが、WMSが日々記録している作業履歴や在庫情報です。
それらを分析することで、「どこで・何が・どのくらい起きているのか」 を具体的な数字として把握できるようになります。
数字で現状が見えるようになると、改善の優先順位もつけやすくなります。まずは「どの課題に対して、どのデータを見にいくのか」を整理することが、WMSデータ分析の第一歩です。
WMSのデータは、上手に活用することで現場のさまざまな局面に効いてきます。ここでは代表的な三つの効果について見ていきましょう。
WMSでは、入荷・出荷・棚卸などの作業実績が時刻とともに記録されています。
これを時系列で整理すると、「どの時間帯に負荷が集中しているのか」「どのエリアだけ常に忙しいのか」といった実態が浮かび上がります。
例えば、午前中は入荷作業が集中し、午後にはピッキングが集中しているといった傾向が見えてくれば、シフトや人員配置を見直すきっかけになります。
また、特定のロケーションや商品だけが頻繁に動いている場合には、棚の配置や動線の見直しによって、作業効率を大きく改善できることもあります。
作業実績と人員数を組み合わせて分析すれば、「1人あたり何オーダー処理できているのか」 といった生産性指標も把握できます。拠点別・シフト別・作業者別に生産性を比較していくことで、ボトルネックになっている工程や時間帯が見つかります。
こうしたデータは、マテハン設備やロボット導入の投資判断にも役立ちます。現状の生産性を把握した上で、「どの工程を自動化すれば、どれくらい人件費やリードタイムを削減できるのか」をシミュレーションすることが可能です。
誤出荷や在庫差異といったトラブルは、発生した瞬間だけ見るのではなく、発生頻度やパターンを蓄積して分析することが重要です。
WMSのデータから、「どの商品で、どの工程で、どのようなミスが起きやすいのか」を追っていくと、具体的な対策が打ちやすくなります。
例えば、特定のSKUでミスが多いのであれば、ロケーションの見直しや表示の工夫、バーコード運用の徹底などが対策候補になります。
また、特定の時間帯や作業者に偏っているなら、教育や人員配置、ダブルチェックのタイミングを見直すことで、トラブルを未然に防げる可能性があります。
そもそも、WMSからはどのようなデータが取得できるのでしょうか。システムの仕様や設定によって違いはありますが、代表的なものを挙げると次のような情報が日々蓄積されています。
入荷日時・ロット・賞味期限・保管ロケーション・出荷日時・出荷先・オーダー単位の処理時間・作業者ID・検品結果 など、現場の動きをかなり細かい粒度で記録できるのがWMSの特徴です。
もちろん、こうしたすべての項目を一度に分析しようとすると、かえって混乱してしまいます。重要なのは、「どの課題に対して、どのデータを見ればよいか」を整理しながら少しずつ広げていくことです。
実際にWMSデータ分析を始める際の流れは、以下のようなイメージです。
専用のBIツールや高度な分析環境を用意しなくても、Excelレベルの集計から十分にスタートできます。
むしろ、最初から複雑な仕組みを作るより、シンプルなレポートを定期的に見ながら改善サイクルを回した方が、現場に定着しやすいというケースが多く見られます。
WMSのデータを使った改善に取り組むとき、最初から難しい分析手法を使う必要はありません。
大切なのは、現場が「やってみよう」と思えるシンプルな進め方です。ここでは、多くの企業で実践されている三つのステップを紹介します。
最初のテーマを欲張りすぎないことが、改善を定着させるコツです。
たとえば、誤出荷率、生産性(オーダー/人時)、在庫回転率など、どの指標でも構いません。いま現場にとって最も課題感が強いものをひとつ決めるだけで、データ分析の方向性は明確になります。
KPIが決まると、「どのデータを見れば改善につながるか」が自然と絞り込まれます。やみくもにデータを集めるのではなく、目的 → データ → 改善策という順番で考えていくことが重要です。
多くの現場が最初にぶつかる壁は、「データがあるのに見方が分からない」という点です。
しかし実際には、WMSが標準で用意している帳票やCSV出力だけでも、有益な気づきが得られることがほとんどです。
特別なツールは必要ありません。たとえば次のような取り組みから始められます。
重要なのは、“現場全体で同じ数字を見ながら話ができる環境を作ること”です。数字があれば、主観ではなく事実に基づいた議論ができるようになります。
分析結果は、行動に移してこそ価値があります。
とはいえ、大きな改善をいきなり狙う必要はありません。動線の見直しや棚替え、受け入れ体制の整理など、小さな取り組みを少しずつ積み重ねるだけでも現場は確実に変化します。
改善案を実行したら、必ずデータで効果を検証します。ピッキング時間は短縮したか、作業者の生産性はどう変わったか、誤出荷は減ったか。
こうした“改善 → 測定 → 標準化”のループを繰り返すことで、現場にデータ活用の文化が根づいていきます。
WMSのデータ活用は、近年さらに進化しています。その大きな推進力となっているのがAI(人工知能)の搭載です。
AI搭載WMSは、従来の「過去のデータを振り返る分析」だけでなく、未来を予測して提案する“能動的なシステム”へと進化しつつあります。
AI搭載WMSでは、これまで人が経験と勘で判断してきた部分を、データに基づいて自動化・最適化できるようになります。代表的な例として次のようなものが挙げられます。
特に多拠点運営やSKU数が多い現場では、人の目と手で判断するのが難しい領域ほど、AIの恩恵は大きくなります。
AIと聞くと難しく聞こえますが、大切なのは「現場が理解し、受け入れられるAIかどうか」です。
たとえば、なぜこの提案をしているのか分かるか、現場の制約やルールを反映できているか、使い勝手が悪く現場に負担をかけていないか、といった点が重要です。
一見高度なAIでも、現場が“使いこなせない仕組み”では意味がありません。逆に、現場が気づかない改善ポイントをAIが補ってくれるWMSは、データ活用のハードルを大きく下げてくれます。
WMS選定時に多くの企業が注目するのは、作業指示のしやすさや入出荷の処理速度など、現場の即効性のある機能です。
しかし今後5年、10年先を見据えると、“データをどれだけ活かせるか”は非常に大きな差別化ポイントになります。
これからWMSを検討するなら、次のような観点は押さえておきたいポイントです。
特に「最初はシンプルに導入し、必要に応じて高度化させたい」企業にとって、拡張性のあるWMSは大きなメリットになります。
WMSのデータ分析は、専門的な知識がなければできないものではありません。
むしろ、現場の課題に寄り添って、ひとつのKPIから始めるだけで、大きな改善につながることが多くあります。
まずは「追うべき指標」を決め、WMSの標準帳票やCSVで現状を可視化し、小さな改善を試しながらデータで効果を測る。その先に、AI搭載WMSという選択肢も見えてきます。
もし「自社の規模や業態に合うWMSを知りたい」「AI搭載WMSに興味がある」という場合は、当サイトで紹介している規模・業態別のおすすめWMSや導入事例もぜひ参考にしてみてください。
自社の現場と相性の良い仕組みが、きっと見つかるはずです。
WMS(倉庫管理システム)と一言で言っても、 会社の規模や業態によって求められる機能は大きく異なります。 このサイトでは、倉庫・工場の規模に応じたおすすめのWMSを紹介します。
フレームワークス
(iWMS® G5)
引用元:フレームワークス公式HP
https://www.frame-wx.com/wms
シーネット
(ci.Himalayas/R2)
引用元:シーネット公式HP
https://www.cross-docking.com/service/wms-standard/
mylogi
(mylogi)
引用元:mylogi公式HP
https://system.mylogi.jp/